不安神経症とは、心因的な要因からくる「不安症」という病気の通称です。強い不安感が引き金となって、息苦しさや発汗、震えなど、日常生活に支障をきたすような身体への不調が現れます。
ストレス疾患には、主に自律神経の調整や血流量の調整をする「肝」がかかわっています。「肝」は、「気」「血(けつ)」が十分でないと機能しません。さらに、「肝」は血流量の調整にかかわっていることから、ストレスを受けるとさらに「血(けつ)」が不足していきます。外部からの精神的刺激により、感情が抑えられると、「肝」の自律神経系のはたらきがうまくいかなくなり、怒りやイライラなどさまざまな症状が生じてしまいます。ほかにも、「心」の大脳(精神活動)のはたらきがうまくいかなくなると、精神症状が生じます。
東洋医学では「鬱病」の事を「鬱証」と言います。「鬱証」は、精神的抑圧から精神のバランスが崩れその影響で体内の「気」の流れがスムーズに流れなくなってしまい鬱々とした気分が続いている状態と考えます。「鬱証」の起こるメカニズムは複雑ですが、最も重要なのは肝・脾・心の三臓の損傷と気血失調です。
東洋医学では、精神の症状と、体の症状を分けて考えることはしておらず、体の構成要素や機能のバランスの失調に伴っていろいろな精神の症状も出てくると考えていました。ですから、昔の漢方の本には、発熱や尿の出方、便秘、下痢、動悸、呼吸が浅い、汗が出る、などの体の症状と一緒に、落ち着かない、うつうつとしている、驚きやすい、眠れない、うわごとを言う、などといった精神症状が書かれています。現在の精神科での医療は、体の症状は、内科や他の身体科で扱い、精神の症状をもっぱら取り上げて、それに対して診断、治療をしていくといったものとなっています。
私たちは、薬に頼らなくてもまずはできることをおススメしています。「セロトニン」というホルモンをご存じでしょうか?セロトニンは心のバランスを整える作用のある伝達物質で、別名「幸せホルモン」と呼ばれています。このセロトニンが不足すると、暴力的になったり、うつ病を発症することもあると言われています。体内のセロトニンは90%以上が小腸にあり、消化を助ける働きなどをしているのですが、わずか2%の脳に存在するセロトニンが、人の心の安定に大きく影響を及ぼすのです。セロトニンという物質は、生活習慣によって増えたり減ったりることがわかっています。
セロトニンは太陽の出ている時間に分泌されて、夜や睡眠中は分泌が少なくなることがわかっていますので、早寝早起きをするとよいでしょう。太陽の光を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化されます。昼夜逆転の生活をするとセロトニンとメラトニンの分泌のバランスや体内時計が狂ってしまうため、不眠症になったり、うつ病になりやすくなったりしてしまいます。
一定のリズムを刻む単純な運動をするとセロトニン分泌に効果があるそうです。ヴァーモント大学の研究者によると20分間のワークアウトをすることで、その後約12時間気分をよくすることができるそう。大切な人とスキンシップをするのもおススメです。家族や恋人など、信頼できる人とのスキンシップはセロトニンを増やすのに効果があると言われています。
トリプトファンを含んだ食品を食べるのもよしです。セロトニンを生成する際に重要な材料が「トリプトファン」という物質ですが、このトリプトファンは人間の体内で生成することができないため食品で補う必要があります。その中でよいものはナッツ。米国科学協会の研究によると、20人の被験者に対してはナッツを避けるように伝え、22人にはナッツの多い食事をするようにと指導しました。この12週間の実験の結果、ナッツを食べたグループのほうがセロトニンのレベルが高かったといいます。ナッツ以外ではパイナップル、プラムやトマトもセロトニンの値を増やしてくれる食材。トリプトファンを含む食品は、肉類、魚介類、チーズ、ごま、納豆、麺類、ごはん、パンなど。
瞑想をするのもよしです。研究によるとメディテーションをすることで血圧を下げたり、セロトニンの値を増やしてくれるということを示している。たったの30分間の瞑想でうつの症状を改善してくれるそう。これはジョンホプキンス大学の研究によるものです。
マッサージを受けるのもよしです。マイアミ大学の薬学部の研究者がマッサージ療法に関する12以上の研究に対して包括的レビューを行ったところ、人間の生化学に影響を与えることで、不安やうつに対して効果的に対処することができると結論付けました。いくつかの連続する研究では、約500人のうつや不安を抱える成人の男女と子供を調査したところ、マッサージ療法は被験者のコルチゾールの値を約53%も減らし、セロトニンのレベルも上げることができたそうです。 |